「老化は“病”である」。世界保健機関(WHO)も肯定…驚愕の“新常識”3/4

2022.08.04 更新

「老化」は万病に共通する、脅威的なリスク因子

「人類は老化という病を克服する」という共通認識を持つことは、極めて大きな意味を持ちます。歴史的インパクトを考慮すると、「地球こそが動いている」という地動説や、「人類は月に到達できる」というアポロ計画並みのインパクトではないでしょうか? まさに、医学の常識がひっくり返ろうとしている真っ最中。人類社会におけるグレート・ローテーションが進行中なのです。

 

がんの中でも死亡数1位は肺がんですが、タバコが原因で肺がんになる可能性があることは広く知られています。男性ならばリスク4.8倍、女性ならばリスク3.9倍。受動喫煙でもリスク1.3倍と言われています。これを理由に、大々的に禁煙キャンペーンが打ち出されたり、政策にも反映されたりしている一方で、老化による肺がんのリスクを考慮するならば。リスクは100~1000倍というところでしょう。事実、どんなに喫煙しても20歳で肺がんになることは極めて稀ですが、喫煙歴のない80歳の方が肺がんになることはよくあることです。読者の方の皮膚感覚にも合致するのではないでしょうか。

 

がん死亡数2位の大腸がんではどうでしょう? 加工肉(ハムやソーセージ)の摂取によりリスクが上昇することが昨今、指摘されています。それでも数割程度でしょう。どんな悪条件が重なっても、せいぜい数倍程度でしょう。一方で、老化を治療せずに放置することは、100~1000倍というところです。やはり、何を治療対象とし、疾患を予防すべきかは自明です。

 

その他、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常など)については、もっとわかりやすいです。細胞が老化して“老化細胞”となった際には、周囲に炎症を引き起こし、SASPと言われる症候群を引き起こします。これは、内臓脂肪が周囲に炎症を引き起こし、生活習慣病を合併するメタボリックシンドロームに類似しています。炎症を引き起こす主体である“老化細胞”を除去、あるいは、何かしらの作用でその炎症を鎮静化(抗炎症)させることで、生物学的年齢(biological age)を巻き戻すことが可能です。やはり、治療すべきは“老化”なのです。

 

もう、読者の方もお気づきでしょう。老化とは、それ以外のリスク因子を無視できるほどにまで突出したインパクトを持つリスク因子なのです。加えて、全リスク因子のなかで唯一、万病に共通するリスク因子でもあるのです。この、インパクトの大きさとカバー範囲の広さは、二重の意味で、極めて特殊な要因です。「人類は老化という病を克服する」という宣言の意義はここにあります。

 

※「老化は“病”である」。世界保健機関(WHO)も肯定…驚愕の“新常識” 4回の掲載(7/7、7/21、8/4、8/18)は「幻冬舎ゴールドオンライン」にも転載されました。