幹細胞治療+老化治療、アンチエイジングは第二段階へ

2023.02.14 更新

ここ数年、アンチエイジング医療に大きな変化が訪れていると感じます。

やはり本命は再生医療領域の幹細胞を用いた治療です。

そして、幹細胞そのものを扱う再生医療は、安全性に対する懸念から、再生医療法といった法規制が整備され、I種、II種、III種の許認可制になりました。

一方で、幹細胞から抽出した幹細胞培養上清液を使用する医療は、市場を拡大しています。

医療機関のみならず、エステや化粧品、コスメ業界でも話題になっています。

 

また、昨今では長寿サプリとして話題となっているNMNも。

NMNの点滴投与なども、実施する医療機関が増えてきています。

また、5ALAや5デアザフラビン(TND1128)も。

 

自由診療領域は、医療とは言え、ビジネスの側面が色濃く出ます。

過度な商業主義(コマーシャリズム)の結果、一般の方々の理解が追い付かず、混乱が生じている事例も。

 

どちらも、同じアンチエイジング医療ですが、根本にある思考回路が異なります。

「老化」を捉えるのに様々な切り口がありますが、生命の基本単位である細胞で区切ってみましょう。

 

 

老化とは、

①正常細胞の減少

②老化細胞の出現

の二つに分けると、整理しやすいです。

 

身近な例で例えると、

・アクセルを踏む

・ブレーキを外す

ことは別の行為であり、両方を組み合わせることにより、一層高い効果が期待出来ます。

 

同様に、

・正常細胞を補充(足し算の行為)

・老化細胞を除去(引き算の行為)

ことは別の治療であり、両方を組み合わせることにより、一層高い効果が期待出来ます。

 

実際には、

・正常細胞を補充 = 成長因子、成長ホルモンの補充 = 幹細胞幹細胞培養上清液を用いた治療

・老化細胞を除去 = 阻害因子、阻害物資の除去 = NMNや5デアザフラビン(TND1128)等、サーチュインブースターを用いた治療

(※老化細胞除去薬は未承認の為、割愛しますが高い期待を寄せています。)

とイメージをもって頂ければ。

(より詳しく、正確な情報は、各種治療法のリンク先をご参照下さい。)

 

 

そして、それぞれの系統の中で、更に、分類をしていきます。

「幹細胞治療」について

二つの切り口で整理すると分かりやすいです。

自分自身由来の自家か、他人様由来の他科か、の軸。

もう一つが、細胞そのものを扱うか、それとも、幹細胞を培養する際に得られる上澄み液(上清液)を扱うか。

①自分由来の、幹細胞 → 認可制の再生医療(再生医療法でI種、II種、III種と指定されています)

②他人由来の、幹細胞 → 認可外の再生医療(再生医療法が施行された現在は、国内では違法です)

③自分由来の、上清液 → ACRS療法と呼ばれる治療(点滴、局所注入、等)

④他人由来の、上清液 → 通常の幹細胞培養上清液治療(点滴、局所注入、等)、美容液や化粧品に配合

となります。

 

そもそも、細胞を扱うものは安全性など基準が高く、世間一般に出回っている「幹細胞コスメ」には、幹細胞そのものは入っていません。

③の自己血由来の成長因子も含んでおらず、④の領域“のみ”です。

 

率直に言って、①~④のどれを推奨するかは、個々人によると思います。

①③の様に、自分自身の細胞由来であるが故に、アレルギー反応などの副作用、有害事象が少ないと説明することは容易です。

一方で④の様に、自分由来の細胞の活きが良いと上清液のパワー(成長因子、エクソソーム等)も弱く、品質保証された既製品の投与が一番良いとも説明出来ます。

②は、日本国の法律が及ばない所へ出かけて、特別なVIPの方向けに行いましょう、とも説明出来ます。

様は、一長一短です。

この様な際、常に、私のポリシーは一貫しています。

「負担が少ないものからやる。身体的、金銭的、時間的に、です。」

 

 

次に、「老化治療」について。

①細胞レベルの“老化”を無くす

②遺伝子レベルの“老化”を治す

の二つに整理出来ます。

 

老化細胞の存在により、SASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象)が引き起こされることが知られています。

この老化細胞を除去する為に、老化細胞除去薬(セノリティクス)が研究開発中です。

当院でも是非、観察研究を行ってみたいと常々考えていますが、本質は抗がん剤であり、慎重な検証が必要です。

 

老化細胞は本来、

・免疫細胞による除去

・老化細胞のアポトーシス

により無くなるものであるため、

・免疫細胞の活性化

ミトコンドリアの活性化や、老化細胞除去薬(セノリティクス)によるアポトーシス誘導

は、治療法として有効である可能性があります。

 

また、②遺伝子レベルで老化を捉えてみます。

遺伝子がどの程度汚れているか(専門用語:エピジェネティック・クロック)に応じて、生物学的年齢を測定する考えが話題です。

この遺伝子レベルの“老化”を治療する行為が、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化、に他なりません。

すると、

・サーチュインブースターの投与

が正義となる訳です。

 

こうして整理すると、最先端のアンチエイジング治療の構図は、以下の様になります。

①正常細胞の減少 → 正常細胞の補充 → 幹細胞治療など、再生医療の系統

②老化細胞の出現 → 阻害要因の除去 → 老化細胞除去薬(セノリティクス)、ミトコンドリア/サーチュインブースター

この考えの下、銀座アイグラッドクリニックでは、幹細胞あるいは幹細胞培養上清液を用いた治療に加え、5デアザフラビン(TND1128)を用いた老化治療に注力しています。

幹細胞治療“だけ”を行う段階から、明確に、第二段階に移行したと考えています。