ここ数年、アンチエイジング医療に大きな変化が訪れていると感じます。
やはり本命は再生医療領域の幹細胞を用いた治療です。
そして、幹細胞そのものを扱う再生医療は、安全性に対する懸念から、再生医療法といった法規制が整備され、I種、II種、III種の許認可制になりました。
一方で、幹細胞から抽出した幹細胞培養上清液を使用する医療は、市場を拡大しています。
医療機関のみならず、エステや化粧品、コスメ業界でも話題になっています。
また、昨今では長寿サプリとして話題となっているNMNも。
NMNの点滴投与なども、実施する医療機関が増えてきています。
また、5ALAや5デアザフラビン(TND1128)も。
自由診療領域は、医療とは言え、ビジネスの側面が色濃く出ます。
過度な商業主義(コマーシャリズム)の結果、一般の方々の理解が追い付かず、混乱が生じている事例も。
どちらも、同じアンチエイジング医療ですが、根本にある思考回路が異なります。
「老化」を捉えるのに様々な切り口がありますが、生命の基本単位である細胞で区切ってみましょう。
老化とは、
①正常細胞の減少
②老化細胞の出現
の二つに分けると、整理しやすいです。
身近な例で例えると、
・アクセルを踏む
・ブレーキを外す
ことは別の行為であり、両方を組み合わせることにより、一層高い効果が期待出来ます。
同様に、
・正常細胞を補充(足し算の行為)
・老化細胞を除去(引き算の行為)
ことは別の治療であり、両方を組み合わせることにより、一層高い効果が期待出来ます。
実際には、
・正常細胞を補充 = 成長因子、成長ホルモンの補充 = 幹細胞や幹細胞培養上清液を用いた治療
・老化細胞を除去 = 阻害因子、阻害物資の除去 = NMNや5デアザフラビン(TND1128)等、サーチュインブースターを用いた治療
(※老化細胞除去薬は未承認の為、割愛しますが高い期待を寄せています。)
とイメージをもって頂ければ。
(より詳しく、正確な情報は、各種治療法のリンク先をご参照下さい。)
そして、それぞれの系統の中で、更に、分類をしていきます。
「幹細胞治療」について
二つの切り口で整理すると分かりやすいです。
自分自身由来の自家か、他人様由来の他科か、の軸。
もう一つが、細胞そのものを扱うか、それとも、幹細胞を培養する際に得られる上澄み液(上清液)を扱うか。
①自分由来の、幹細胞 → 認可制の再生医療(再生医療法でI種、II種、III種と指定されています)
②他人由来の、幹細胞 → 認可外の再生医療(再生医療法が施行された現在は、国内では違法です)
③自分由来の、上清液 → ACRS療法と呼ばれる治療(点滴、局所注入、等)
④他人由来の、上清液 → 通常の幹細胞培養上清液治療(点滴、局所注入、等)、美容液や化粧品に配合
となります。
そもそも、細胞を扱うものは安全性など基準が高く、世間一般に出回っている「幹細胞コスメ」には、幹細胞そのものは入っていません。
③の自己血由来の成長因子も含んでおらず、④の領域“のみ”です。
率直に言って、①~④のどれを推奨するかは、個々人によると思います。
①③の様に、自分自身の細胞由来であるが故に、アレルギー反応などの副作用、有害事象が少ないと説明することは容易です。
一方で④の様に、自分由来の細胞の活きが良いと上清液のパワー(成長因子、エクソソーム等)も弱く、品質保証された既製品の投与が一番良いとも説明出来ます。
②は、日本国の法律が及ばない所へ出かけて、特別なVIPの方向けに行いましょう、とも説明出来ます。
様は、一長一短です。
この様な際、常に、私のポリシーは一貫しています。
「負担が少ないものからやる。身体的、金銭的、時間的に、です。」
次に、「老化治療」について。
①細胞レベルの“老化”を無くす
②遺伝子レベルの“老化”を治す
の二つに整理出来ます。
老化細胞の存在により、SASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象)が引き起こされることが知られています。
この老化細胞を除去する為に、老化細胞除去薬(セノリティクス)が研究開発中です。
当院でも是非、観察研究を行ってみたいと常々考えていますが、本質は抗がん剤であり、慎重な検証が必要です。
老化細胞は本来、
・免疫細胞による除去
・老化細胞のアポトーシス
により無くなるものであるため、
・免疫細胞の活性化
・ミトコンドリアの活性化や、老化細胞除去薬(セノリティクス)によるアポトーシス誘導
は、治療法として有効である可能性があります。
また、②遺伝子レベルで老化を捉えてみます。
遺伝子がどの程度汚れているか(専門用語:エピジェネティック・クロック)に応じて、生物学的年齢を測定する考えが話題です。
この遺伝子レベルの“老化”を治療する行為が、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化、に他なりません。
すると、
・サーチュインブースターの投与
が正義となる訳です。
こうして整理すると、最先端のアンチエイジング治療の構図は、以下の様になります。
①正常細胞の減少 → 正常細胞の補充 → 幹細胞治療など、再生医療の系統
②老化細胞の出現 → 阻害要因の除去 → 老化細胞除去薬(セノリティクス)、ミトコンドリア/サーチュインブースター
この考えの下、銀座アイグラッドクリニックでは、幹細胞あるいは幹細胞培養上清液を用いた治療に加え、5デアザフラビン(TND1128)を用いた老化治療に注力しています。
幹細胞治療“だけ”を行う段階から、明確に、第二段階に移行したと考えています。