私たちの体は約60兆個もの細胞から成り立っており、細胞内では古くなったタンパク質などを分解し再利用する「オートファジー」というシステムが働いています。現在、健康や美容への応用について研究が進められており、一部の研究では有用性が示唆されています。
オートファジーの効果が現れるまでの期間や、効果を持続・向上させる方法、健康や美容への具体的な影響について解説します。正しい知識と実践方法を身につけることで、オートファジーを最大限に活用し健康で美しい毎日を目指せます。
オートファジーは老化にも影響を与えます。以下の記事では老化に与える効果や、活性化させる方法を解説していますので、合わせてご覧ください。
>>オートファジーが老化に与える効果と活性化させる方法を解説!
目次
オートファジーの効果が出るまで
オートファジーは、すぐに効果が出ると思われがちですが、実際にはある程度の時間が必要です。オートファジーの効果が出るまでについて、以下の3つに分けて解説します。
- 効果発現までの時間
- 効果を持続させる方法
- 効果を高める生活習慣
効果発現までの時間
一般的に、オートファジーが活性化し始めるのは、空腹になってから12~16時間後と言われています。「16時間断食(夕食後から翌日の昼食まで何も食べない)」が有名です。
効果を実感するまでの期間は、個人差が大きいですが、お通じが良くなるなどの変化は比較的早く、2~3週間ほどで感じる人もいます。肌の調子が改善されるなどの変化は、1~2か月ほどかかる場合もあります。
効果を持続させる方法
オートファジーの効果を実感できても、一時的なものでは意味がありません。効果を持続させるには、オートファジーを活性化させる生活を継続することが重要です。具体的な方法としては、以下の3つの柱を意識しましょう。
- 定期的な断食
- 適度な運動
- バランスの良い食事
断食を習慣化することで、オートファジーを定期的に活性化できます。毎日行う必要はありませんが、週に数回行うだけでも効果が期待できます。16時間断食以外にも、週に1~2日の軽断食なども効果的です。
ウォーキングやジョギングなどの軽い運動も、オートファジーを活性化させる効果があります。毎日30分程度のウォーキングを目標に、無理なく続けられる範囲で運動を取り入れてみましょう。激しい運動は、かえって身体に負担をかける場合があるので、軽めの運動を継続することが大切です。
栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。肉や魚、大豆製品などのタンパク質を積極的に摂り、ご飯やパン、麺類などの炭水化物は控えめにしましょう。極端な糖質制限は健康を害する可能性があるので、バランスの良い食事を心がけることが重要です。
効果を高める生活習慣
オートファジーの効果をさらに高めるためには、以下のような日々の生活習慣にも気を配る必要があります。
- 質の高い睡眠
- ストレス管理
- 水分補給
睡眠不足は、体内のオートファジーの働きを弱める可能性があります。成長ホルモンが深い睡眠中に多く分泌されることと関係しています。成長ホルモンは、細胞の修復や再生を助ける大切な役割を持ち、オートファジーの働きにも影響を与えます。オートファジーの効果を高めるためには、毎日7~9時間の十分な睡眠をとりましょう。
ストレスも、オートファジーの働きに悪影響を与える可能性があります。ストレスを感じると、体内で活性酸素が発生し、細胞を傷つけてしまいます。オートファジーは、活性酸素によるダメージを修復する役割も担っているため、ストレスをため込まないことが重要です。趣味やリラックスできる時間を作るなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
水分不足は、体内の代謝機能を低下させ、オートファジーの働きにも影響を与える可能性があります。オートファジーは、細胞内の不要なものを分解する過程で、水分を必要とします。こまめな水分補給を心がけ、1日1.5~2リットル程度の水分摂取を目標にしましょう。
生活習慣を改善することで、オートファジーの効果を高め、健康な体を維持できます。オートファジーを正しく理解することで、健康寿命の延伸や美容効果など、さまざまな恩恵を受けることができます。
オートファジーで得られる効果3選
オートファジーによって得られる効果を3つのカテゴリーに分けてご紹介します。
- 健康効果:老化抑制、免疫力向上など
- 美容効果:肌のターンオーバー促進、シミ・シワ改善など
- 精神面への効果:ストレス軽減、睡眠の質向上
健康効果:老化抑制、免疫力向上など
オートファジーは、細胞内の古くなったタンパク質やミトコンドリアといった細胞小器官を分解します。新しいものと入れ替えることで、細胞の機能を維持し、老化を遅らせる効果が期待できます。細胞が元気になれば、免疫力もアップし、病気になりにくい体を作るサポートにもつながります。
老化は、細胞内に「ゴミ」が溜まることが原因の一つです。ゴミとは、機能不全に陥ったタンパク質や細胞小器官などを指します。オートファジーは、ゴミを掃除してくれる働きがあるため、老化の抑制に役立つと考えられています。
加齢に伴って増加する活性酸素は、細胞にダメージを与えて老化を促進します。オートファジーは、活性酸素によって損傷を受けた細胞成分を分解・除去することで、細胞の健康を維持し、老化を防ぐ役割を果たします。
食事に含まれるポリフェノールは、オートファジーを活性化させ、細胞の老化や炎症の抑制に寄与すると考えられています。緑茶や赤ワイン、ブルーベリーなどに多く含まれるポリフェノールは、抗酸化作用が強く、老化の原因となる活性酸素を除去する働きがあります。
ポリフェノールは、オートファジーを活性化させることで、細胞内のゴミを掃除し、細胞の機能を回復させる効果も期待できます。オートファジーは、細胞内に侵入した病原体やウイルスを分解することで、感染から身を守る働きがあります。免疫細胞の機能を維持するのにも役立っています。
美容効果:肌のターンオーバー促進、シミ・シワ改善など
オートファジーは、肌のターンオーバーを促進し、肌の老化を防ぐ効果も期待できます。肌のターンオーバーとは、古い細胞が剥がれ落ち、新しい細胞が生まれるサイクルのことです。ターンオーバーがスムーズに行われることで、シミやくすみ、シワなどが改善され、透明感のあるみずみずしい肌を保つことが期待できます。
一部の研究では、オートファジーが細胞機能に影響を与える可能性が示唆されていますが、具体的な美容効果については個人差があり、科学的に確立されていない部分もあります。
そもそもの「老化の原因と対策」については別記事で紹介しているので、ぜひ合わせてご確認ください。
>>老化の原因と対策!なぜ起こるのか?何歳から始めるべきかを徹底解説
精神面への効果:ストレス軽減、睡眠の質向上
オートファジーは、ストレスホルモンの分泌を抑え、精神を安定させる効果が期待できると言われています。ストレスが軽減されると、睡眠の質も向上し、心身ともにリラックスした状態を保つことができます。良質な睡眠は、健康維持にもつながります。
ストレスを感じると、体内でコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。過剰なストレスホルモンは、自律神経のバランスを崩し、不眠やイライラ、不安感などの症状を引き起こす可能性があります。オートファジーは、ストレスホルモンの分泌を抑えることで、症状を緩和し、精神的な安定をもたらすと考えられています。
オートファジーに関する注意点
オートファジーを活性化させる方法として知られる断食も、誤った方法で行うと健康を損なう可能性があります。オートファジーに関する注意点は以下のとおりです。
- 過度な食事制限は逆効果
- 持病のある方は医師に相談
適切に実践しないと、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
過度な食事制限は逆効果
断食はオートファジーのスイッチを入れる効果的な方法の一つですが、過度な食事制限は逆効果になる可能性があります。長期間の断食や、必要な栄養素が不足した状態での断食は、筋肉量の減少や体の不調につながる可能性があります。
オートファジーが細胞の材料を再利用する際に、必要な栄養素が不足していると健康な細胞まで分解してしまうためです。バランスの良い食事から得られる栄養素は、細胞の材料となる大切な要素です。タンパク質は体の組織を作るのに必要ですし、ビタミンやミネラルは体の機能を調節するのに欠かせません。
栄養素が不足すると、オートファジーの働きが阻害され、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。断食を行う場合は、無理のない範囲で行うことが重要です。断食中も水分補給をしっかり行い、断食後にはバランスの良い食事を心がけてください。
タンパク質(肉や魚、卵、大豆製品など)、ビタミン(野菜や果物など)、ミネラル(海藻や乳製品など)は、細胞の健康維持に不可欠な栄養素です。
持病のある方は医師に相談
オートファジーは健康に役立つ機能ですが、持病のある方、妊娠中や授乳中の方は注意が必要です持病の種類によっては、断食などの方法でオートファジーを活性化させることが体に負担をかける可能性があります。
例えば、糖尿病の方は低血糖を起こすリスクがあります。心臓病や腎臓病など、他の持病を持っている方は症状が悪化する可能性も考えられます。
持病のある方や妊娠中、授乳中の方がオートファジーを活用したい場合は、必ず事前に医師に相談しましょう。医師は患者さんの体の状態を把握し、適切なアドバイスをしてくれます。自己判断で断食などを行うのは危険です。
現在服用している薬がある場合も、医師に相談することが大切です。薬によっては、オートファジーの働きに影響を与える可能性があります。例えば、一部の抗がん剤にはオートファジーを阻害する作用があります。
ご自身の体の状態を理解し、専門家のアドバイスを受けながら、安全にオートファジーを活用していくようにしましょう。
まとめ
オートファジーは、細胞の自浄作用で、健康や美容にさまざまな効果が期待できます。効果が出るまでの期間は個人差がありますが、お通じの変化は2~3週間、肌の変化は1~2か月ほどかかる場合もあります。効果を持続させるためには、以下の習慣を心がけましょう。
- 定期的な断食
- 適度な運動
- バランスの良い食事
質の高い睡眠やストレス管理、水分補給も大切です。オートファジーは日々の生活習慣を改善することで、より効果的に活用できます。ぜひ、今日からできることから始めて、健康で美しい毎日を送りましょう。
参考文献
- Shuxian Dong, Qian Wang, Yun-Ruei Kao, Antonio Diaz, Inmaculada Tasset, Susmita Kaushik, Victor Thiruthuvanathan, Aliona Zintiridou, Edward Nieves, Monika Dzieciatkowska, Julie A. Reisz, Evripidis Gavathiotis, Angelo D’Alessandro, Britta Will, Ana Maria Cuervo. Chaperone-mediated autophagy sustains haematopoietic stem-cell function. Nature, 2021, 591(7848), p.117-123.
- Ying Liu, Minglv Fang, Xiaohui Tu, Xueying Mo, Lu Zhang, Binrui Yang, Feijie Wang, Young-Bum Kim, Cheng Huang, Liang Chen, Shengjie Fan. Dietary Polyphenols as Anti-Aging Agents: Targeting the Hallmarks of Aging. Nutrients, 2024, 16(19), p.3305.