5デアザフラビン(TND1128)とは老化治療薬の一種として、今後の活用が期待されている物質です。

一言で言えば、ビタミンB2を少し改変したものです。

そして、老化治療薬の一種として昨今話題のNMNよりも、その効果効能が強力である可能性があります。

同物質を使用した臨床研究を、銀座アイグラッドクリニックは世界で初めて実施しました。

本ページにしか掲載されていない情報もありますので、目次を参考にして、必要な情報をご確認ください。

なお、「老化は治る」ことについては、こちらのコラム「『老化は治る。』は既定路線」に詳しく記載してあります。

YouTubeでも解説しています。復習出来る様に、ぜひ、コメント、良いね、チャンネル登録をお願いします。関連動画も複数、公開しています。

そもそもデアザフラビンとは何か?

デアザフラビンとは、ビタミンB2の誘導体(化学構造の一部を改変したもの)の一種です。

学術的に正確に表現するなら「イソアロキサジン環が有する4つの窒素(N:アザ)のいずれかを炭素やイオウなどに置換した一群の化合物」となります。

これを一言で言えば、ビタミンB2’とか、新型ビタミンB2などの表現になります。

ビタミンB2とは別名リボフラビンと呼ばれ、先述のイソアロキサジン環を有します。

このイソアロキサジン環には、4つの窒素元素(N)、すなわちアザ(aza)を含みます。

それぞれ、化学式の第1, 3, 5, 10位の位置に存在するアザ(aza)のうち、第5位のアザ(aza)を取り除いたものが、5デアザフラビンです。

上図のうちの第5位、X=Nの場合はフラビンと呼ばれ、X=CHの場合はデアザフラビンと呼ばれます。

デアザフラビンとはアザを取り除いたフラビンという意味です。デカフェインコーヒーが、カフェインを取り除いたコーヒーと同じ構文です。

このデアザフラビンは最近になって注目され始めた物質ですが、その研究の歴史は50年以上に渡ります。

そして、デアザフラビンには何種類ものサブタイプが存在することも事実です。一連の“化合物群”なのですから。

デアザフラビンなら何でもよい訳ではなく、どういう種類のデアザフラビンなのかを確認することが重要なのが伝われば、ここでは十分です。

様々な種類のデアザフラビン

先ほど、デアザフラビンとは、リボフラビンから窒素元素(N)=アザ(aza)を取り除いたものと述べました。

世界で初めて発見されたデアザフラビンは、5dNRFと呼ばれます。第5位のアザ(aza)を取り除いた5デアザリボフラビンでした。

以降、デアザフラビンといえば、通常、5デアザフラビンを意味する様になります。

しかしながら、理屈上は、1デアザフラビン、3デアザフラビン、10デアザフラビンも合成が可能と考えられます。

事実、1デアザフラビンで論文を検索したところ、当該論文を見つけることもできました。

正確性の為に記載しましたが、実際は、デアザフラビンといえば5デアザフラビンのことを意味すると思っていただいて結構です。

さて。世界で最初に発見されたデアザフラビンは5dNRFと説明しました。

この物質によって、ビタミンB2の研究は急速に発展しました。

次の大きな転機は、自然界に存在するデアザフラビンF420の発見でした。

現在、最も有名なデアザフラビンは、このF420と呼ばれるものです。50年以上に渡る研究の歴史があり、論文サイトではreviewと呼ばれる総説(まとめ)も閲覧できます。

なお、当然ながら、本稿で老化治療薬としての可能性を模索している5デアザフラビン(TND1128)は全くの別物であることに留意してください。

デアザフラビンはNMNみたいなもの

先ほど、5デアザフラビンはビタミンB2’みたいなものと述べました。

基本骨格はビタミンB2なのですが、その実際の機能は、ビタミンB3の系統であるNAD+やNADP+と同一とされています。

NAD+とは、老化治療薬としての活用が期待されるNMNが、生体内で変換したものです。

NADP+とは、NAD+にリン(P)が加わったものです。実質的な機能はNAD+と同様です。

さて、デアザフラビンを学術的に、専門的に表現するならば、「NAD+やNADP+につぐ、第三のピリミジンヌクレオチド」となります。

NAD+、NADP+に次ぐ、第三の存在と思っていただければ十分です。

例えるなら、日本円、米国ドルに次ぐ、第三の通貨としてのユーロみたいなもの、というイメージです。

高校化学のレベルで説明してみましょう。「極性」と呼ばれるものです。

大学化学のレベルでいうなら、「電子論」と呼ばれるものです。

磁石にN極とS極がある様に、分子の内部にも、電子の偏り、+と-があります。

水の分子式はH2Oと知られていますが、詳細にとらえてみると、2つのH+と、1つのO2-で表現されます。

この様な電子の偏り、「極性」が、NAD+とNADP+、5デアザフラビンでは全く同一なのです。

詳細な数字で記載する場合には、大学化学の「電子論」の範疇となりますが、ここでは割愛します。

実際に、5デアザフラビンの化学式の内部に、NAD+/NADP+の構造が含まれていることが上図から確認出来ます。

繰り返しますが、F420とは自然界に存在する、最も有名なデアザフラビンのことでした。

こうして、昨今のNMN研究が勢いを増すとともに、デアザフラビンの可能性についても注目が集まり始めたという経緯です。

5デアザフラビン(TND1128)は新規の合成デアザフラビン

5デアザフラビンがビタミンB2骨格でありながら、実際の機能がビタミンB3系統であるNAD+そのものであることは、公知の事実でした。

状況が動くのは、昨今のNMNブーム到来によってです。

NMNやNAD+/NADP+はビタミンB3骨格ゆえに化学的安定性が乏しい一方で、ビタミンB2骨格(イソアロキサジン環)のデアザフラビンは化学的に安定しています。そして、いくつもの種類のサブタイプの作成が可能でした。

この中から実際にサンプルアッセイを作成し、最良のものがTND1128と呼ばれるものです。

実際の構造物は下図の通りです。

この5デアザフラビン(TND1128)は現在、pubmedという論文サイトで2本の基礎研究が検索可能です。

5デアザフラビン(TND1128)の基礎データ

物事を理解するためには、既存の何かと比較するとよいです。

今回は、NMNと比較してみます。用途特許の記載によると、

・ミトコンドリアでのATP生成能がNMNよりも数十倍強力

と記載があります。ATPとは生体内の基軸エネルギーのことです。

以下の図は、線虫という生物モデルにおいて、エネルギー生成を評価したものです。

mito-tracker red 蛍光染色法と呼ばれる手法で、赤色発光の程度が強ければ強いほど、エネルギーであるATPが多く生成されたことを示しています。

controlといのが、何も添加していない基準となる状態を意味します。

NMNの投与で赤色発光が強くなっていますが、TND1128の投与の方が、より強い輝きをはなっていることが一目瞭然です。

TND1128に関する論文の紹介は、別途コラムで解説することにします。

5デアザフラビン(TND1128)を活用した世界初の臨床研究

銀座アイグラッドクリニックでは、5デアザフラビン(TND1128)を用いた世界初の臨床研究を実施しています。

臨床研究は主に、何か特定の命題を証明する介入研究と、それ以外の観察研究に大別されます。

一般的に、エビデンス構築というと、介入研究(中でも、Randomized Control Trialと呼ばれる手法が花形)のイメージが強いです。治験もこの一部です。

しかしながら、この介入研究には「何を証明すべきか」という命題が、既に定義されているのです。

5デアザフラビン(TND1128)などの様に、新規に合成された物質においては、そもそも「何を証明すべきか」が分かりません。

このヒント、洞察を得る為には、観察研究の他に最適な手段がありません。

観察研究の中で、最も機動的に検証可能なのが、“記述的研究”と呼ばれるものです。

エンドウ豆の実験では「メンデルの遺伝の法則」が有名です。

このメンデルが最初に行ったのも、事象を丹念に観察する“記述的研究”に他なりません。

それが、後世になって、一般法則のように語られるようになる、という具合です。

5デアザフラビン(TND1128)を活用した臨床研究の実際

銀座アイグラッドクリニックでは、累積1,000例を超える処方実績を有しています。

以下は、私が一から執筆した書籍「老化は治る。」新型ビタミンが世界を救うです。

一般書籍ではありますが、観察研究の途中経過を記載してあります。

現時点で、最も5デアザフラビン(TND1128)に関する情報がまとまっているコンテンツだと思っています。

内容はやや専門的ではありますが、医師の方や、悩みの深い患者の方などに好評です。

特に、開業医の先生方の中には、書籍を切っ掛けに、5デアザフラビン(TND1128)を臨床用試薬としてご提供する関係性の方もいらっしゃいます。

論文化にいたるには、臨床例に対応した内容の基礎研究の追加実施や、そもそも臨床例のN数を確保する必要など、各種の課題があるのは事実です。

先々の展開を見据え、疫学研究者との提携も積み重ねている最中です。

現時点での症例報告としては、

  • 糖尿病、高血圧、脂質異常、肥満など、生活習慣病の改善
  • 狭心症発作、不整脈の改善
  • 喘息発作の改善
  • 慢性腎不全(透析導入の回避)、肝硬変の改善
  • 脊柱管狭窄症、頚椎症、五十肩、間欠性跛行の改善
  • 認知症の改善
  • コロナ後遺症の改善

等の臨床実績があります。

当然、アンチエイジング効果も際立って高い症例もあります。

個別の症例については、当院HPのコンテンツを随時、整備していこうと思います。

5デアザフラビン(TND1128)の課題

同物質は、130℃までタンパク変性を起こさず、非常に安定した物質です。

この意味で品質管理に有利だと言えるでしょう。

一方で、化学に詳しい方なら、その構造式から推測できる通り、水に非常に溶けにくいです。

すなわち、生体内への伝達方法に課題があると言えます。

この意味では、水溶性のNMNに軍配が上がるでしょう。

5デアザフラビン(TND1128)の伝達手段(Drug Delivery System:DDSと呼びます)については、各種の技術の応用が期待されますが、実際に生身の人間で検証したデータはありません。

生身の人間に対する投与は、一歩間違うと人体実験と呼ばれます。

それゆえ、銀座アイグラッドクリニックは、わざわざ倫理審査委員会の審査を通過し、承認を得て行っております。

余談ですが、査読のある学術集会においては、新規性のある物質の投与は、倫理審査委員会の承認がないと、演題としての登録すら認められていません。

まだまだ課題が多いのも事実です。

5デアザフラビン(TND1128)による有害事象

先述の観察研究において、累積1000症例を超える投与例の中で、肝機能障害を2例認めました。

血液検査でAST/ALTの項目の上昇を認めました。

以降も、数名の薬剤性肝機能障害を認める症例があります。

いずれも、休薬により、改善を認めております。

一般の方々に説明する際には、抗生物質の投与によって薬剤性肝機能障害が生じるのと同様の意味合い、とお伝えしています。

上記は、あくまでも、現時点での報告となります。

丹念に観察研究を続ける中で、思いもよらぬ反応が生じることもあります。

5デアザフラビン(TND1128)にまつわる社会問題

5デアザフラビン(TND1128)は、その物質としての特殊性から、老化治療薬としての活用が期待されています。

しかしながら、基礎研究も臨床研究も、NMNと比較すると圧倒的に不足しています。

pubmedと呼ばれる論文サイトでは、「TND1128」で検索して該当するのはわずかに2本です。

いずれも基礎研究の論文であり、臨床に関する報告は全く存在しません。

期待が高まる素晴らしい物質ではありますが、この普及には現実的に大きな課題があります。

それは、ドラッグリポジショニングと呼ばれる社会問題です。

コラムで詳しく解説しますが、この社会問題を解決する為に、銀座アイグラッドクリニックは活動の幅を拡張し続けています。

今後の活躍にご期待ください。