エクソソームとは

2023.02.19 更新

エクソソーム(Exoxome、エキソソーム)とは、「細胞外小胞」の一種です。

細胞の内部の情報を、外に伝達する、レターパックの様なものです。

その大きさは、50-150nm(ナノメートル)とされ、平均的な細胞の大きさ20um(マイクロメートル)の1/200程度です。

内部には、脂質、タンパク質、核酸を主に含み、各種の成長因子やサイトカインも含有しています。

発見当時は、細胞の内部の不要なものを細胞外に捨てているだけと考えられていましたが、現在では、細胞同士がこのエクソソームを介して情報伝達をしていると考えられています。

エクソソームの数が多い=情報交換の為のメールやレターパックが多い、というイメージで結構です。

 

サイエンスに詳しい方であれば、同じ情報伝達の技術として、ナノ化技術である「ミセル」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

ミセルとの最大の違いは、エクソソームの壁が脂質二重膜構造を取ることです。

他の細胞外小胞である、マイクロベシクル(約10倍のサイズ)やアポトーシス小体(約10~50倍のサイズ)も脂質二重膜構造を取ります。

この脂質二重膜構造こそが、細胞の壁である細胞壁の特徴であり、細胞外小胞(エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体)が細胞の内部の情報を含む成分であることを示しています。

(※ミセルは脂質一重膜とでも呼ぶべき構造をしている。)

その中でも特に、エクソソームは細胞間の情報交換の主体であると考えられています。

 

エクソソームの個数が多い=情報伝達の為のメールやレターパックが多い

という意味であり、肝心の中身が問題となります。

・がん細胞から分泌されるエクソソーム → がんの転移に関係?

・老化細胞から分泌されるエクソソーム → 細胞老化やSASPに関係?

・幹細胞から分泌されるエクソソーム  → アンチエイジング効果がある?

等と、考えられています。

 

最初の二つ、がん細胞や老化細胞から分泌されるエクソソームは、あくまでも研究用です。

その過程で、がんの本質や、細胞老化の本質が判明します。

例えば、がん細胞から分泌されるエクソソームが正常細胞からのそれとは異なることを利用して、がんの早期発見も模索されています。[1]

また、老化した細胞が分泌するエクソソームは、正常細胞のそれと比較して、大きさや形状は変わらず、エクソソーム個数は5倍、内部に含有する情報も5倍、という実験データもあります。[2]

一方で、患者の方々に投与するエクソソームは須らく、幹細胞から得られたエクソソームを意味します。

 

エクソソーム点滴、エクソソーム吸入、等の施術が認知されつつありますが、本質は幹細胞治療と同じです。

幹細胞そのものがエクソソームを分泌します。

当然、幹細胞を培養した際の上澄み液、幹細胞培養上清液にもエクソソームが含まれています。

エクソソーム点滴、エクソソーム吸入とは、このエクソソーム“だけ”を濃縮したもの、という意味です。

しかしながら、その精製方法は技術的に困難な要素が多く、本当にエクソソーム“だけ”を抽出出来ているかには慎重な検証が必要です。[3]

とは言え、難病に苦しむ患者の方にとっては、結果が伴えば何でも良い訳で。

 

この様な際、常に、私のポリシーは一貫しています。

「負担が少ないものからやる。身体的、金銭的、時間的に、です。」

観察研究の為に、また、倫理審査委員会に申請しますか。

 

[1] https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane/40/5/40_235/_pdf

[2] https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/46146/20180713112141961776/k7564_4.pdf

[3] https://www.cdc.gov/hai/outbreaks/stem-cell-products.html

[4] https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920336/data/index.html