幹細胞培養上清液とは何か

2023.02.16 更新

幹細胞培養上清液とは文字通り、幹細胞を培養する際に使用していた上澄み液のことです。

従来は、再生医療の研究の過程で、幹細胞を培養する際に廃棄していました。

しかしながら、具材を煮込んだコンソメスープにうま味成分が含まれる様に、上清液にも幹細胞が分泌する各種成分が含まれていることが判明します。

すると、この幹細胞培養上清液を日常診療や、美容領域、化粧品領域に使用する流れが加速します。

皆さんが昨今、一般雑誌で見かける「幹細胞●●」は、全て、この培養上清液を意味します。

実際の細胞を扱う商品が市販されていたら、犯罪です。

 

 

幹細胞培養上清液には、主に、以下の成分が含まれます。一般に、サイトカインや成長因子(Growth Factor:GFと略す)などと呼ばれています。

・EGF(Epidermal Growth Factor) 上皮成長因子

・FGF(Fibroblast Growth Factor) 線維芽細胞増殖因子

・IGF(Insulin like Growth Factor) インスリン様成長因子

・HGF(Hepatocyte Growth Factor) 肝細胞増殖因子

・VEGF(Vascular Endotherial Growth Factor) 血管内皮細胞増殖因子

等、数百種類の成長因子、サイトカインが含有されています。

 

単一の成分“だけ”を切り取って、効果効能を喧伝するよりも、複数のバランスが重要であり、パワーの目安の一つとして、代表的な成長因子(Growth Factor)の一つを、含有量ふくめ記載しているのだな、と思って問題ないです。

EGFは此方の方が多い、でもFGFは此方の方が多い、などという議論には、意味がありません。

製造する側としては、主に、HGFを含有量の目安にすることが一般的と認識しています。

 

また、昨今では、エクソソーム含有量を切り口に宣伝する業者も増えてきました。

本来、エクソソームは幹細胞培養上清液に必ず含まれているものです。

同じものに対して、伝え方を変えているだけです。リンク先を参照頂くことで、理解が深まるかと思います。

 

 

培養する幹細胞の種類だけ、得られる幹細胞培養上清液の種類も様々です。代表的な由来組織としては、

・骨髄にある幹細胞

・歯髄/乳歯髄にある幹細胞

・脂肪にある幹細胞

・臍帯にある幹細胞

・表皮にある幹細胞

などが挙げられます。

当然、由来となる組織によって、数百種類の成長因子、サイトカインのバランスも各種各様です。

また、理屈の上での数値と、実臨床での効果効能とも違いがあります。

ワインを扱うソムリエは、グラスワインでテイスティングした後に、合うものを提案します。

同様に、『幹細胞ソムリエ®』という商標に込めた想いは、少量試した後に、合うものを推奨したいという考えからです。

 

 

この幹細胞培養上清液には、どの様な効果があるのでしょうか。

一言で言えば、細胞の活性化、です。

例えば、線維芽細胞(Fibroblast Cell)は、もともと、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、等、肌に良いとされるものを生成しています。

この線維芽細胞(Fibroblast Cell)を活性化させることにより(特に、FGF:Fibroblast Growth Factor)、肌再生が促される、という事例は美容クリニックでは症例が蓄積しています。

シミやシワの改善などには、特に効果が期待できる施術の一つです。

銀座アイグラッドクリニックのコンセプト「自然美の追求」は、この幹細胞培養上清液の直接注入により、おでこのシワが改善した一例を経験したことに端を発します。

 

もう一つ。

歯が欠損した際に再生を期待して歯髄幹細胞を埋め込んだ事例がありました。

結果は、見事に組織が再生したのですが、実は、埋め込んだ幹細胞そのものが増殖したのではなく、幹細胞から分泌された成長因子により、元々そこにあった細胞が増殖したことが判明します。

それならば、幹細胞そのものを埋め込まずとも、幹細胞培養上清液を局所に投与すればよいだろう、という訳です。

 

これらの症例を皮切りに、実臨床で、多くの症例が蓄積されていきます。

現在では、幹細胞培養上清液の点滴投与や、局所注入、点鼻吸入などが、少しずつ一般的になってきていると感じています。