オートファジーで癌になるリスクは減る?健康への影響と注意点を解説

2025.02.01 更新

オートファジーは、古くなった細胞や不要なタンパク質を分解・再利用する体内の重要な仕組みで、健康維持や寿命に関わります。

この機能は癌とも関係が深く、一部の研究では「マイトファジー」と呼ばれるプロセスが癌抑制に関与する可能性があると示唆されています。しかし、同時に癌細胞の生存を助ける側面もあり、その影響は一概に良いとは言えません。

オートファジーの健康への影響や活性化の方法を知り、健康長寿のヒントを探りましょう。

オートファジーは老化にも影響を与えます。以下の記事では老化に与える効果や、活性化させる方法を解説していますので、合わせてご覧ください。
>>オートファジーが老化に与える効果と活性化させる方法を解説!

オートファジーは癌の発生リスクと関係するのか?

マイトファジーは、損傷したミトコンドリアを選択的に分解するオートファジーの一種であり、細胞の健康維持に寄与する可能性があります。ただし、癌の種類や進行状況によっては、マイトファジーが癌細胞の生存を助ける場合もあります。

オートファジーは栄養不足の環境下で細胞内の成分を再利用し、エネルギーを確保する機能を持ちます。これにより、癌細胞がストレス環境下でも生存しやすくなることが指摘されています。

オートファジーの働きと癌への影響

「マイトファジー」と呼ばれるプロセスでは、古くなったミトコンドリアを除去し、細胞へのダメージを抑える役割を果たします。これが正常に機能することで、細胞の異常増殖を防ぎ、癌の発生リスクを低減する可能性が示唆されています。2021年の研究では、マイトファジーと癌の発生・転移との関連が示唆されました。

オートファジーが細胞の健全性を保つことで、癌の発生リスクを低減する可能性が示唆されています。

癌細胞を助ける側面と治療への影響

オートファジーは常に癌を抑えるわけではありません。癌細胞は急速に増殖するため、大量の栄養とエネルギーを必要とします。栄養不足の環境では、オートファジーが活性化し、癌細胞が自身のタンパク質を分解して生き延びる助けとなることがあります。この働きにより、オートファジーは癌細胞の生存を支えています

さらに、オートファジーは癌細胞の薬剤耐性にも関与しており、抗癌剤治療の効果を低下させる要因となることが指摘されています。今後の研究でオートファジーの働きを制御できれば、癌治療の新たな戦略として活用される可能性が期待されています。

オートファジーと健康・寿命の関係

オートファジーの働きは、細胞の健康を維持するうえで重要であり、老化の抑制や生活習慣病の予防、免疫力の向上など健康効果につながることがわかってきています。人間の体は約37兆個もの細胞からできており、その一つひとつでオートファジーが休むことなく働いています。

老化抑制

細胞は紫外線や活性酸素などの影響を受け、ダメージが蓄積すると老化が進行します。オートファジーは、損傷した細胞や老廃物を分解・除去し、細胞機能を維持することで老化の進行を遅らせます。しかし、加齢とともにオートファジーの働きが低下すると、細胞内に不要な物質が蓄積し、老化が加速します

老化細胞は炎症性物質を分泌し、周囲の細胞に影響を及ぼすことが知られています。オートファジーは老化細胞の除去にも関与しており、その機能を維持することが健康寿命の延伸に重要と考えられています。

そもそもの「老化の原因と対策」については別記事で紹介しているので、ぜひ合わせてご確認ください。
>>老化の原因と対策!なぜ起こるのか?何歳から始めるべきかを徹底解説

生活習慣病予防

オートファジーは脂肪の分解を促進し、メタボリックシンドロームの予防に貢献すると考えられています。内臓脂肪が蓄積すると炎症性物質が分泌され、動脈硬化や糖尿病などのリスクが高まります。オートファジーは炎症を抑制し、代謝の正常化に寄与します。

エネルギーを産生するミトコンドリアの品質管理にも関わり、ミトコンドリアの機能低下による代謝異常を防ぐ役割を果たします。オートファジーの適切な活性化が、健康維持に寄与する可能性が示唆されています。

免疫力向上

オートファジーが免疫機能に影響を与える可能性が指摘されています。細胞内に侵入したウイルスや細菌を分解し、感染の拡大を防ぐ役割を果たします。また、免疫細胞の活性化にも影響を与え、病原体を効果的に排除するのを助けます。

オートファジーは感染症の予防や免疫システムの強化に寄与すると考えられています。オートファジーが適切に機能することで、病気に対する抵抗力を高め、健康な体を維持することができるのです。

具体的な効果と注意点

オートファジーは、健康にさまざまなメリットをもたらす一方、過剰な活性化は体に悪影響を与える可能性も懸念されています。オートファジーを健康に役立てるために適切な方法でオートファジーを活性化し、健康維持に役立てましょう。適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠などを推奨します。また、持病がある方は、必ず医師に相談してから行うようにしてください。

オートファジーと癌の関係

オートファジーと癌の関係は、単純な善悪で割り切れるものではありません。癌の発生を抑制する側面がある一方で、癌細胞の成長を助ける側面も持ち合わせているのです。

癌細胞の抑制

オートファジーは、細胞内の異常なタンパク質や損傷したミトコンドリアを分解し、癌の発生を抑制する可能性があると考えられています。異常なタンパク質の蓄積は細胞の機能異常を引き起こし、癌化の要因となりますが、オートファジーによって除去できます。

損傷したミトコンドリアが活性酸素を大量に生み出すと細胞にダメージを与えますが、オートファジーの一種であるマイトファジーは大量に生み出すことを防ぐことで、癌化のリスクを低減します。

癌細胞の促進

一方で、オートファジーは癌細胞の生存を助ける側面もあります。癌細胞は急速に増殖するため、大量の栄養を必要とします。栄養不足の環境ではオートファジーを活用してタンパク質や細胞小器官を分解して栄養源とし、癌細胞は過酷な環境でも生き延びることが可能になります。

抗癌剤によるストレスに対しても、オートファジーが活性化することで耐性を獲得し、治療効果を低下させることが知られています。そのため、オートファジーをどのように制御するかが、癌治療における重要な課題となっています。

最新の研究

オートファジーと癌の関係は複雑で、癌の種類や進行度によって影響は異なります。そのため、オートファジーを標的とした新たな癌治療法の研究が進められています。癌細胞において過剰に活性化したオートファジーを抑制する薬剤の開発や、逆にオートファジーを促進し、癌細胞の自己消化を促す治療法が該当します。

癌の増殖抑制や抗癌剤の効果向上を目指した研究が進められています。オートファジーは健康維持に不可欠なシステムですが、癌との関係は一筋縄ではいかないため、さらなる研究が求められています。

オートファジーを活性化させる方法

オートファジーを活性化させる方法には、主に以下の3つがあります。

断食・ファスティング

断食は、オートファジーを活性化させる最も効果的な方法の一つです。特に、16時間断食法が注目されています。1日24時間のうち16時間を断食し、残りの8時間で食事をとる方法です。夜8時に夕食を終え、翌日の正午まで断食を続けます。

断食中は水や無糖の飲み物で水分補給をすることが大切です。この方法により、体内に一時的な飢餓状態が作り出され、これがオートファジーを活性化させるストレスとなります。

断食の効果は個人差がありますが、多くの人が1週間程度で効果を実感し始めます。急激な断食は体に負担をかける可能性があるため、徐々に時間を延ばしていきましょう。

断食中はエネルギー不足になりがちなので、食事の時間帯には栄養バランスの良い食事を心がけてください。断食は健康な人であれば安全に実践できますが、持病がある方や妊娠中の方は医師に相談してから始めることが重要です。

適度な運動

運動もオートファジーを活性化させる効果があります。特に、有酸素運動が効果的とされています。毎日30分程度のウォーキングでもオートファジーの活性化が期待できます。運動により筋肉細胞に軽い負荷をかけることで、オートファジーが活性化し、損傷した細胞の修復を促進します。

ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動が効果的です。運動の強度は、軽く息が上がる程度が目安です。激しすぎる運動は逆効果になる可能性があるため注意が必要です。運動の時間帯も重要で、食後すぐの運動は避け、食事から2〜3時間程度空けてから行うのが理想的です。

運動を始める前には、ストレッチなどで体をほぐしましょう。また、運動後は十分な水分補給を心がけましょう。運動習慣を身につけることで、オートファジーの活性化だけでなく、全身の健康維持にもつながります

食事内容の調整

特定の食品成分を摂取することでもオートファジーの活性化を促すことができます。ウロリチンという成分はオートファジーの働きをサポートすることが知られています

ウロリチンはザクロ、ベリー類、くるみなどのナッツ類に多く含まれています。積極的に摂取することで、オートファジーの活性化を促進できる可能性があります。

高脂肪食を控えることもオートファジーの活性化に効果があるとされています。代わりに、野菜や果物、全粒穀物などの食物繊維が豊富な食品を中心とした食事を心がけましょう。緑茶やコーヒーに含まれるポリフェノールもオートファジーを促進する効果があるとされています。

極端な食事制限は栄養不足を招く可能性があるため避けるべきです。バランスの取れた食事を基本としつつ、オートファジーを活性化させる食品を適度に取り入れましょう。夜遅い時間の食事は控えめにし、朝食をしっかり摂ることで、体内のリズムが整い、オートファジーの活性化につながります。

まとめ

オートファジーは、細胞が自身の不要な成分を分解・再利用する仕組みで、健康維持に関与すると考えられています。癌細胞の抑制と促進の両面に関与する可能性があります。健康面では、以下の効果が期待されています。

  • 老化抑制
  • 生活習慣病予防
  • 免疫力向上
  • 細胞の若返り
  • 慢性炎症の抑制
  • 脳の健康維持

オートファジーを活性化させる方法として、16時間断食法や日々のウォーキング、ウロリチンを含む食品の摂取などが効果的です。オートファジーは癌細胞の生存を助ける側面もあるため、健康的な生活習慣を心がけつつ、オートファジーを適度に活用することが大切です。

極端な実践は避け、個人の体調に合わせて無理のない範囲で取り入れましょう。

オートファジーの効果が出るまでの期間や肌への影響などは以下の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
>>オートファジーの効果が出るまではどのくらい?肌や健康への影響も解説

参考文献

Poole LP, Macleod KF. Mitophagy in tumorigenesis and metastasis. Cellular and molecular life sciences:CMLS 78, no. 8 (2021):3817-3851.