オートファジーとは?細胞が生まれ変わる仕組みを簡単にわかりやすく解説

2025.02.01 更新

私たちの体は約37兆個もの細胞で構成され、日々生まれ変わりを繰り返しています。毎日約200gものタンパク質が新しく作られる一方で、古くなったタンパク質は「オートファジー」と呼ばれるシステムで処理されています。

オートファジーは、不要になった細胞成分を分解し、新しい材料として再利用する働きを持つ作用です。オートファジーが正常に機能することで、私たちは健康を維持できています。この記事では、オートファジーのメカニズムや健康への影響、活性化させるポイントを解説します。

オートファジーの効果が出るまでの期間や肌への影響などは以下の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
>>オートファジーの効果が出るまではどのくらい?肌や健康への影響も解説

オートファジーの基礎知識

オートファジーとは細胞内の不要な物質を分解する仕組みのことです。オートファジーの概要や種類、仕組みをわかりやすく解説します。

オートファジーとは細胞内の不要な物質を分解する仕組みのこと

オートファジーとは、ギリシャ語の「オート(自分)」と「ファジー(食べる)」を組み合わせた言葉で「自分を食べる」という意味です。細胞の中には、古くなったタンパク質、役割を終えた細胞小器官、侵入してきた細菌やウイルスなどの不要物が存在します。オートファジーの役割は、不要物を分解し、アミノ酸などの小さな分子にまで分解することで、新しい細胞の材料として再利用することです。

細胞は、オートファジーによって常に細胞内をきれいに保ち、健康な状態を維持しています。オートファジーは細胞の健康維持に不可欠なシステムであり、「細胞の自食作用」です。細胞が栄養不足に陥った際には、オートファジーによって自身の構成成分を分解し、エネルギー源として利用することもあります。

オートファジーの3つの種類

オートファジーには、大きく分けて以下の3つの種類があります。

  • マクロオートファジー
  • ミクロオートファジー
  • シャペロン介在性オートファジー

マクロオートファジーは、不要物を二重膜(オートファゴソーム)で包み込み、細胞内小器官(リソソーム)と融合させて不要物を分解します。細胞内の大きな構造物を分解する主要なオートファジー経路であり、最も頻繁に起こるオートファジーです。ミクロオートファジーは、リソソーム自体が細胞膜の一部を直接取り込み、不要物を分解します

シャペロン介在性オートファジーは、特定のタンパク質を選択的に分解する、より特殊なタイプのオートファジーです。熱ショックタンパク質と呼ばれるシャペロンが、分解対象となるタンパク質をリソソームへと導きます。

オートファジーには複数の種類があり、それぞれ異なるメカニズムで細胞内物質を分解しています。それぞれのオートファジーが協調的に働くことで、細胞内の環境を健全に保つことが可能です。

オートファジーの仕組み

オートファジーは、不要な物質を分解し、再利用するための細胞内で行われる一連のプロセスです。オートファジーでは、最初に不要物の認識を行います。古くなったタンパク質や損傷したミトコンドリアなどは、特定のシグナルを発することで、オートファジー機構に認識されます。

次のプロセスはオートファゴソームの形成です。オートファゴソームとは球状の二重膜構造で、不要物を閉じ込める働きがあります。

オートファゴソームはリソソームと融合します。リソソームとは、加水分解酵素と呼ばれる強力な分解酵素を含む細胞内小器官です。リソソームの働きによって、オートファゴソームに閉じ込められた不要物が分解されます分解された物質は、アミノ酸などの小さな分子になり、新しいタンパク質や細胞の構成成分の材料として利用可能です。

オートファジーは、細胞が自身の構成成分を分解・再利用する、理にかなったシステムです。

オートファジーと健康の関係

オートファジーと健康がどのように関わっているのかを解説します。

オートファジーの健康効果

オートファジーは細胞の健康を保つだけでなく、私たちの体全体の健康にもさまざまな良い影響を与えます。主な健康効果は以下のとおりです。

  • 老化の抑制
  • 免疫力の向上
  • 代謝の調整

オートファジーは、細胞内の恒常性を保つ働きを通じて、健康維持に寄与する可能性があります。

オートファジー機能の低下は悪影響

オートファジーの機能が低下すると、細胞内に不要な物質が蓄積し、細胞の機能が正常に働かなくなります。細胞レベルでの「ゴミ」の蓄積は、体にさまざまな悪影響を及ぼすため注意が必要です。

オートファジーの低下は、老化の促進につながります。細胞内の老廃物が蓄積することで、細胞の老化が早まり、シワやたるみなどの老化現象が目立ちやすくなるためです。他にも、がんや糖尿病などの病気のリスク増加につながります。

オートファジーと病気の関係

オートファジーの機能低下は、さまざまな病気の発症の要因です。神経変性疾患は、脳への異常なタンパク質の蓄積が発症の一因であり、オートファジーによるタンパク質の分解不足が蓄積を促す可能性があります。

がん細胞では、オートファジーが増殖を抑制する場合も、がん細胞の生存を助ける場合もあることが報告されています。オートファジーの機能異常は、がん細胞の増殖を促進する可能性があり、がんの発症や進行の要因です。

糖尿病においては、オートファジーはインスリンの働きを調整する役割も担っています。オートファジーが低下すると、インスリンの働きが悪くなり、血糖値のコントロールが難しくなるため、糖尿病のリスクが高まります。

オートファジーを活性化するポイント5選

健康を保つために欠かせないオートファジーを活性化するポイントを5つ解説します。

  • 断食
  • 運動
  • 栄養素
  • ストレス管理
  • 睡眠

記事の内容を実践することで、細胞レベルでの健康を促進し、老化や病気のリスクを軽減する効果が期待できます。自分にできそうなものから挑戦してみましょう。

断食

オートファジーを活性化させる方法として、断食が有効です。細胞が栄養不足の状態になると、オートファジーが活性化され、細胞内の不要な成分を分解してエネルギー源として利用します。

断食というと、過酷なイメージを持つ方もいますが、オートファジー活性化のためには、16時間程度の断食で十分です。夕食を午後8時に終えて、翌日の昼食を正午12時に摂ると、自然に16時間の食事間隔を空けることができます。

無理のない範囲で、ご自身の生活スタイルに合わせて継続しましょう。

運動

適度な運動もオートファジーを活性化させるのに効果的です。激しい運動である必要はありません。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる強度の運動を週に2~3回、30分程度行うだけでも十分です。

運動によって筋肉が刺激されると、細胞内のエネルギー消費量が増加し、オートファジーが活性化されます。運動はミトコンドリアの機能向上にもつながり、細胞のエネルギー産生効率を高める効果も期待できます。

栄養素

特定の栄養素を摂取することで、オートファジー活性化のサポートが可能です。緑茶やブルーベリーなどに含まれるポリフェノールは、細胞の損傷を防ぐことでオートファジーを促進する効果が期待されます。ナッツや魚、アマニ油などに含まれるオメガ3脂肪酸は、抗炎症作用があり、オートファジーの活性化が期待できます。

バランスの良い食事を心がけ、オートファジーの活性化が期待できる栄養素を含む食品を積極的に取り入れることで、細胞の健康維持を目指しましょう。食事は細胞の材料となるため、栄養バランスの良い食事が重要です。

ストレス管理

過剰なストレスは、さまざまな体の不調を引き起こすだけでなく、オートファジーの働きを低下させる可能性があります。ストレスホルモンの増加は、細胞の機能を阻害し、オートファジーの効率を低下させると考えられています。

ストレスを溜め込まないためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが重要です。趣味を楽しむ、深呼吸をするなど、自分に合ったストレス管理方法を見つけましょう。

睡眠

質の良い睡眠は、体の修復や再生に不可欠であり、オートファジーの活性化にも欠かせません。睡眠中は、成長ホルモンの分泌が促進されるため、細胞の修復や再生が可能です。細胞の修復や再生は、オートファジーにおいて重要な役割を果たします。

毎日7~8時間程度の睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを心がけることで、オートファジーの働きを最適化できます。質の良い睡眠のためには、寝る前のカフェイン摂取を控え、リラックスする時間を作るなど、睡眠環境を整えることも大切です。

まとめ

オートファジーとは細胞内の不要な物質を分解する仕組みであり、私たちの健康に欠かせません。オートファジーは老化の抑制や免疫力向上などの効果が期待できます。オートファジーの機能が低下すると、老化が進んだりさまざまな病気の原因になったりするため注意が必要です。

オートファジーの活性化には、以下の生活習慣の改善が役立ちます。

  • 断食
  • 運動
  • 栄養素
  • ストレス管理
  • 睡眠

日ごろの生活を見直し、オートファジーの活性化を少しずつ意識してみましょう。

オートファジーは老化にも影響を与えます。以下の記事では老化に与える効果や、活性化させる方法を解説していますので、合わせてご覧ください。
>>オートファジーが老化に与える効果と活性化させる方法を解説!

参考文献

Chrisovalantis Papadopoulos, Bojana Kravic, Hemmo Meyer. Repair or Lysophagy:Dealing with Damaged Lysosomes. J Mol Biol, 2020, 432(1), p.231-239