再生医療のデメリットとは?知っておきたいリスクと注意点

2025.02.01 更新

再生医療とは、損傷した組織や臓器の機能回復を目指す先端医療技術の一つです。最先端技術であるがゆえに、高額な費用や効果の不確実性、適用範囲の限定など、いくつかのデメリットが存在します。

この記事では、再生医療を受ける前に知っておくべき3つのデメリットやリスクについて、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。再生医療のリスクをしっかりと理解し、後悔のない選択をしましょう。

以下の記事では再生医療について、各治療法の費用も解説していますので、合わせてご確認ください。
>>再生医療とは?メリット・デメリットや費用も解説

再生医療のデメリット3つのポイント

再生医療のデメリット3つのポイントは以下のとおりです。

  • 治療費が高額になる可能性がある
  • 標準治療と比べて効果が確立されていない場合がある
  • 適用できる疾患や症状が限られている

治療費が高額になる可能性がある

再生医療は、治療費用が高額になる傾向があります。内訳は、細胞を培養するための特殊な薬剤や、高度な技術を持つ医師や看護師の人件費、特殊な医療機器の維持費、クリーンルームの維持費などがかかります。

培養軟骨移植手術の場合、数百万円の費用がかかることも珍しくありません。最新鋭の顕微鏡や培養装置などの高額な設備投資が必要となるためです。高度な技術を持つ専門スタッフを育成するための教育コストも、治療費に反映されています。

再生医療の多くは健康保険が適用されないため、全額自己負担となる場合があります。

標準治療と比べて効果が確立されていない場合がある

再生医療は、比較的新しい治療法であるため、効果が完全に保証されているとは限りません。効果には個人差があり、場合によっては思うような効果が得られないこともあります。

膝の軟骨再生医療を受けたとしても、すべての人が完全に痛みがなくなるわけではありません。痛みの軽減効果や、日常生活における活動性の改善の程度には個人差があります。患者さま自身の細胞や組織を使って治療を行うため、年齢や基礎疾患、生活習慣などさまざまな要因が影響するためです。

再生医療の中には、効果の持続期間が明確に定まっていないものもあります。どの治療法も、効果の持続期間については十分な長期データが得られていないものがあります。再生医療の長期的な影響については、まだわからない部分があります。

適用できる疾患や症状が限られている

再生医療は、さまざまな疾患の治療に役立つ可能性を秘めていますが、現時点ではすべての病気やケガに適用できるわけではありません。

骨折した骨をくっつける治療や、髪の毛を増やす治療など、特定の疾患や症状に対しては効果が期待されていますが、すべての疾患に効果があるわけではありません。患者さま自身の細胞の状態や、疾患の進行度合いによっては、再生医療が適用できない場合もあります。

治療を受ける前に、ご自身の病気やケガが再生医療の対象となるかどうか、医師に確認することが大切です。現状では、適用できる疾患や症状が限定的であることを理解しておきましょう。

再生医療の3つのリスク

再生医療の3つのリスクは以下のとおりです。

  • 感染症のリスク
  • 腫瘍のリスク
  • 免疫拒絶反応のリスク

感染症のリスク

再生医療では、細胞を体外で培養・加工する工程が必要となる場合があります。この過程で細菌やウイルスなどの病原体が混入する可能性があります。私たちの体は、通常、外部からの病原体の侵入を防ぐための防御システムを備えています。

皮膚や粘膜は外部からの侵入を防ぐバリアとして機能し、白血球は病原体を攻撃・排除します。しかし、体外で培養された細胞は防御システムから一時的に切り離されるため、感染症のリスクが高まります。

感染症のリスクを最小限に抑えるため、再生医療では徹底した衛生管理が不可欠です。細胞の培養・加工は、高度な無菌環境下で行われ、使用する器具や試薬も厳密に滅菌されます。

提供者から採取した細胞は、病原体の有無を調べるために厳格な検査が行われます。徹底した対策を講じても、感染症のリスクを完全になくすことは困難です。感染症が発生した場合、抗生物質や抗ウイルス薬による治療が必要です。重症化すると、入院治療が必要になる場合もあります。

腫瘍のリスク

再生医療の中でも幹細胞を用いる治療では、腫瘍発生のリスクが存在します。幹細胞は、さまざまな種類の細胞に分化する能力を持つ特殊な細胞です。組織や臓器の再生に大きく貢献しますが、同時に腫瘍形成のリスクも高めます。

幹細胞は、通常の細胞と比べて増殖能力が高いため、組織再生に有利な特性を持ちます。しかし、制御が失われた場合、腫瘍の形成につながる可能性があります。腫瘍のリスクを低減するため、再生医療では細胞の増殖と分化を厳密に制御する技術が用いられています。

脂肪組織由来の幹細胞(ASC)などを用いた治療では、腫瘍形成のリスクは比較的低いとされていますが、リスクがゼロではないことを理解しましょう。

免疫拒絶反応のリスク

再生医療では、他家由来の細胞や組織を移植する場合、免疫拒絶反応が起こる可能性があります。免疫拒絶反応とは、移植された細胞や組織を異物と認識した免疫システムが、攻撃・排除しようとする反応です。

私たちの免疫システムは、体内に侵入した病原体や異物から身を守るための重要な役割を果たしています。しかし、移植された細胞や組織も攻撃対象と認識してしまうことがあります。

免疫拒絶反応の程度は、患者さまとドナーのHLA型(白血球の型)の一致度によって大きく異なります。HLA型が一致していれば、免疫拒絶反応は起こりにくくなりますが、完全に一致するドナーを見つけることは容易ではありません。

免疫拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤が使用されます。免疫抑制剤は、免疫システムの働きを抑えることで拒絶反応を防ぎます。しかし、使用することで感染症のリスクが高まる可能性があります。免疫機能が低下すると、体が感染症に対する抵抗力を十分に発揮できなくなるためです。

再生医療を受ける前の注意点

再生医療を受ける前の注意点は以下のとおりです。

  • 信頼できる医療機関を選ぶ
  • セカンドオピニオンを活用する
  • 担当医と十分に相談する
  • 治療効果とリスクを理解する
  • インフォームド・コンセントを徹底する

信頼できる医療機関を選ぶ

再生医療は高度な技術と専門知識を要するため、適切な医療機関を選ぶことが不可欠です。チェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 厚生労働省に届け出をしているか(認可を受けた施設かどうか)
  • 医師の専門性や経験が十分か(再生医療の実績を確認)
  • 設備が最新の研究成果に対応しているか
  • 治療内容や費用、リスクについて詳細な説明があるか

近年では、子宮内膜疾患や関節治療に対して、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)、ECM(細胞外マトリックス)を用いた治療が進められています。最新の治療法に対応できる医療機関を選ぶことが重要です。

再生医療に関する論文発表や学会活動に積極的な医療機関は、最新の知見を取り入れている可能性が高いため、選択時の参考にしましょう。

セカンドオピニオンを活用する

再生医療は比較的新しい治療法であり、一つの医療機関の意見だけで決断するのではなく、複数の専門家の意見を聞くことが推奨されます。セカンドオピニオンを受けるメリットは以下のとおりです。

  • 治療の選択肢を増やすことができる
  • 他の専門家の視点を得ることで、より納得のいく決断ができる
  • 最新の研究や治療方法について新たな情報を得る機会になる

治療に対する不安や疑問を軽減するためにも、セカンドオピニオンを積極的に活用しましょう。

担当医と十分に相談する

再生医療を受けることを決めた場合でも、治療前に担当医と綿密な相談を行うことが不可欠です。以下のポイントを確認しましょう。

  • 治療の具体的な内容(どのような方法で行われるか)
  • 期待される効果(どの程度改善が見込めるか)
  • 副作用やリスク(感染症や腫瘍発生のリスクはないか)
  • 治療にかかる費用(自由診療の場合、どの程度の負担になるか)
  • 治療期間と必要なフォローアップ

不明な点がある場合は遠慮せず質問し、納得したうえで治療に臨むことが重要です。

治療効果とリスクを理解する

再生医療は、すべての疾患に有効なわけではなく、治療効果には個人差があります。以下のリスクも考慮しておきましょう。

  • 期待通りの効果が得られない可能性
  • 感染症のリスク(細胞の培養・加工過程での細菌混入の可能性)
  • 腫瘍形成のリスク(幹細胞の増殖が制御できなくなる可能性)
  • 免疫拒絶反応の可能性(他家由来の細胞を使用する場合)

治療を受ける前に、リスクについて担当医と十分に話し合い、適切な判断をすることが大切です。

インフォームド・コンセントを徹底する

インフォームド・コンセントとは、治療内容やリスク、費用について十分な説明を受け、患者さま自身が理解・納得したうえで治療を受けることです。

再生医療は、治療法によっては長期的な影響が不明な場合もあります。疑問や不安がある場合は、遠慮せずに担当医に質問し、納得するまで説明を受けるようにしましょう。

まとめ

再生医療は、損傷した組織や臓器の機能回復に大きな希望をもたらす革新的な治療法です。しかし、すべての人に適用できるわけではなく、リスクも伴います。再生医療を受ける前に確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 信頼できる医療機関を選ぶ
  • セカンドオピニオンを活用する
  • 担当医と十分に相談する
  • 治療効果とリスクを理解する
  • インフォームド・コンセントを徹底する

再生医療を受けるかどうかは大きな決断です。慎重に情報を収集し、納得できる選択をしましょう。

参考文献