ほうれい線は糸リフトで改善できる?効果やデメリットを医師が解説

2024.09.29 更新

鏡を見る度に深くなるほうれい線に、ため息をついた経験はありませんか? 実はほうれい線は、老化による肌のたるみや表情筋の衰えだけが原因ではありません。

紫外線や乾燥、遺伝などさまざまな要因が複雑に絡み合ってできるため、メカニズムを正しく理解することが大切です。

この記事では、ほうれい線の原因を詳しく解説するとともに、糸リフトによる効果や施術の流れ、リスクやダウンタイムまで医師の立場からわかりやすく解説していきます。

ほうれい線の原因とメカニズム

ほうれい線は、さまざまな要因が複雑に絡み合ってできる老化現象のサインです。原因とメカニズムを1つずつ見ていきましょう。

加齢による肌のたるみ

年齢を重ねると、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンといった成分が減少し、肌の構造が衰えていきます。特に、顔の中でも頬は皮下脂肪が多く重力の影響を受けやすい部分です。加齢とともに頬の脂肪が下垂し、ほうれい線が深くなってしまいます。

表情筋の衰え

顔には、表情を作るための筋肉(表情筋)が約30種類も張り巡らされています。しかし、加齢や生活習慣の乱れによって表情筋も衰えていきます。表情筋は肌の土台となって支えているため、衰えると肌のハリが失われ、ほうれい線ができやすくなるのです。

口角を上げる口角挙筋や頬を持ち上げる大頬骨筋などの衰えは、ほうれい線を深くする原因になります。

皮下脂肪の減少・移動

若い頃は、顔にもたっぷりとした皮下脂肪があります。皮下脂肪は、肌を支え、ふっくらとしたハリのある状態を保つ役割を担っています。加齢とともに、皮下脂肪は徐々に減少し、さらに重力の影響を受けて下に移動していきます。結果、頬の脂肪が減ってしまいほうれい線が深くなってしまうのです。

顔の皮下脂肪も同じように、加齢とともに量が減り皮膚を支えきれなくなることでほうれい線やたるみを引き起こします。

骨の萎縮

顔の骨は、肌を支える土台のようなものです。しかし、加齢に伴い顔の骨もわずかに萎縮していきます。目の周りの骨や頬骨などが萎縮することで、顔全体の骨格が変化し皮膚や脂肪を支えきれなくなり、ほうれい線が目立ってしまいます。

紫外線による光老化

紫外線は、肌の老化を促進させる大きな原因の一つです。紫外線を浴び続けると、肌の奥深くにある真皮層でコラーゲンやエラスチンが破壊され、肌の弾力やハリが失われていきます。結果、肌のたるみが進行し、ほうれい線が深くなってしまうのです。

紫外線を浴び続けることで肌はダメージを受け、コラーゲンやエラスチンなどの弾力繊維が変性し、その機能が低下してしまいます。これが、光老化と呼ばれる現象で、ほうれい線だけでなく、シワ・たるみ・シミなどの原因となります。

乾燥

肌の乾燥もほうれい線を悪化させる要因の一つです。肌が乾燥すると肌のバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。結果、肌の老化が促進され、ほうれい線ができやすくなるのです。

肌は、水分を保持することで外部からの刺激や乾燥から身を守っています。しかし、乾燥によって肌の水分量が低下すると、バリア機能が低下しさまざまな肌トラブルを引き起こしやすくなります。乾燥した肌にも、小ジワやほうれい線などのエイジングサインが現れやすいです。

遺伝

体質や肌質は、遺伝的な影響を受けやすいと言われています。両親や祖父母にほうれい線が目立つ人がいる場合、遺伝的にほうれい線がでやすい体質の可能性があります。

遺伝的な要素は、顔の骨格・皮膚の厚さ・皮下脂肪の量などに影響を与え、ほうれい線の出やすさに関係しています。遺伝的な影響を受けやすい体質かどうかを把握するのは、早めの対策を立てるうえで重要です。

当サイトでは、そもそもの「老化の原因と対策」についても別記事で紹介しているので、合わせてご確認ください。
>>老化の原因と対策!なぜ起こるのか?何歳から始めるべきかを徹底解説

糸リフトで期待できる効果と施術の流れ

ほうれい線は加齢に伴う変化が主な原因で、自然な老化現象の一つです。老けて見られることに加え、疲れた印象や暗い印象を与えてしまうこともあります。

ほうれい線を気にして、自分に自信が持てなくなっているのなら、糸リフトを考えてみてはいかがでしょうか。糸リフトで期待できる効果や施術の流れについて、具体的な症例も交えながら詳しく解説していきます。

糸リフトによるリフトアップ効果

糸リフトは特殊な医療用の糸を皮下に挿入し、たるんだ皮膚を引っ張り上げることでリフトアップ効果をもたらします。糸には小さな突起(コグ)が付いているものがあり、突起が皮膚に引っかかることで、より強力なリフトアップ効果が期待できます。

糸の種類や挿入する場所・本数などを調整することで、患者の皆さま一人ひとりの悩みに合わせた、自然で美しい仕上がりを目指します。具体的にはほうれい線の改善だけでなく、フェイスラインの引き締めや頬のたるみ改善・口角のアップなどにも効果が期待できます。

糸の本数は効果に影響する要素の一つですが、必ずしも多ければ良いというわけではありません。患者の皆さま一人ひとりの顔の骨格や筋肉の付き方・たるみの程度などを考慮し、最適な本数を判断することが重要です。

糸リフトによるコラーゲン産生促進効果

糸リフトの魅力は、リフトアップ効果だけではありません。糸を挿入することで皮膚の細胞が刺激され、コラーゲンやエラスチンの生成が促進される効果も期待できます。

コラーゲンは、肌のハリや弾力を保つために欠かせない成分です。加齢とともにコラーゲンは減少していくため、肌のハリや弾力が失われ、たるみやシワの原因になります。糸リフトによってコラーゲン生成が促進されると、肌の内側からハリと弾力がよみがえり、より若々しい印象を与えられます。

肌の再生能力を利用した治療法と言えます。私たちの体には、傷ついた組織を修復する力があります。糸リフトでは糸を挿入することで、皮膚に意図的に軽い傷をつけ、傷を修復する過程でコラーゲン生成を促します。結果、肌のハリや弾力が高まり、たるみやシワの改善効果が期待できるのです。

カウンセリングと診察

糸リフトを受けるにあたって、まずは医師によるカウンセリングと診察が必要です。カウンセリングでは、患者の皆さまの希望する効果や施術に対する不安や疑問などについてお話を伺います。

「ほうれい線をどの程度改善したいのか」「フェイスラインをどのくらいシャープにしたいのか」「ダウンタイムはどのくらいまでなら許容できるのか」などです。その後診察を行い、患者の皆さまの顔の状態や皮膚の厚さ・たるみ具合などを確認し、最適な施術方法や糸の種類・本数などを決定していきます。

麻酔

糸リフトは、施術時の痛みを最小限に抑えるために局所麻酔を使用します。麻酔が効いてくると、施術中の痛みはほとんど感じなくなります。施術中も意識はあるので、医師と会話をすることも可能です。

糸の挿入

極細の針が付いた医療用の糸を使用するため、痛みは最小限に抑えられます。医師は、あらかじめ決めておいたデザインに沿って丁寧に糸を挿入していきます。糸の挿入する部位や角度・深さなどを調整することで、自然で美しいリフトアップ効果を実現します。

糸リフトに使用される糸は体内で分解・吸収される素材でできており、安全性にも配慮されています。

糸の固定

糸を挿入したら、適切な位置で糸を固定します。糸がしっかりと固定されることで、リフトアップ効果が持続します。固定方法は、使用する糸の種類や固定する部位で異なります。

術後の注意点

糸リフトは、施術後すぐにメイクをして帰宅できる場合が多いです。しかし、施術部位はデリケートな状態になっていますので、術後の注意点を守っていただくことが大切です。特に以下の行動は避けましょう。

  • 施術部位を強くこする
  • マッサージをする
  • 熱いお風呂に長時間入る

施術後しばらくは腫れや内出血が出る可能性があります。これらの症状は、通常1~2週間程度で落ち着いてきます。

ほうれい線の対策は糸リフトだけではありません。自宅で出来る筋トレやマッサージでも改善することが可能です。以下の記事では、ほうれい線の対策について紹介しているので合わせてご覧ください。
>>【医師監修】ほうれい線の対策とは?今日からできる筋トレやマッサージも紹介

糸リフトのリスク・副作用とダウンタイム

糸リフトは、切らずにリフトアップ効果が期待できる魅力的な施術ですが、どんな医療行為にも美容目的の施術であってもリスクや副作用はつきものです。施術を受ける前にメリットだけでなく起こりうるリスクや副作用・ダウンタイムも理解しましょう。糸リフトのリスクや副作用について以下で解説します。

腫れ

糸リフト後、顔に腫れが出ることがあります。糸を挿入した刺激によって一時的に生じる反応です。人間の体は異物が入ってくると、排除しようとします。糸リフトで使用する糸は、体内に吸収される素材でできていますが、それでも体にとっては異物です。

糸を挿入した周囲に炎症反応が起こり、腫れや赤みを生じることがあります。腫れの程度には個人差があります。全く腫れない方もいれば、数日間腫れが続く方もいます。腫れが気になる場合は、冷やしタオルなどで冷やすのがおすすめです。

内出血

糸リフトでは糸を挿入する際に細い針を使用します。ごくまれに内出血が起こることがあります。内出血は、皮膚の下で出血が起こり青あざのようになる現象です。針を刺すとき、皮膚の下にある毛細血管を傷つけてしまうことで起こります。

多くの場合1~2週間ほどで自然に消失します。メイクでカバーすることも可能です。

痛み

糸リフトは局所麻酔を使用するため、施術中の痛みはほとんどありません。麻酔が切れてから数時間~数日は、鈍痛や違和感を感じることがあります。痛みが強い場合や長期間にわたって違和感が続く場合は、自己判断せずに必ず医師に相談しましょう。

感染

糸リフトに限らず、どんな医療行為にも感染のリスクはつきものです。どんなに清潔な環境で施術を行っても、ごくわずかながら、皮膚に存在する常在菌が体内に入ってしまう可能性があります。糸を挿入する際には、皮膚に小さな傷口ができるため菌が侵入するリスクがあります。

糸リフトで感染症が起こる確率はとても低く、適切な処置を行えば問題になることはほとんどありません。万が一、施術部位に強い痛みや腫れ、発熱などの症状が現れた場合は速やかにクリニックに連絡しましょう。

糸の露出

糸リフトに使用される糸は、体内に吸収される素材で作られていますが、ごくまれに糸が皮膚から露出してしまうことがあります。糸の露出は、施術直後や数週間~数か月後に起こることがあります。

糸が露出する原因は、糸が浅い層に挿入されてしまった場合や挿入した糸に対して皮膚の量が十分でない場合です。施術後の激しい運動やマッサージなどによって糸が移動したり、皮膚に負担がかかったりすることでの露出が考えられます。

もし糸が露出してしまった場合は自分で引っ張ったりせずに、すぐにクリニックに連絡してください。

違和感

糸リフト後、糸を入れた部分に違和感や突っ張り感を感じることがあります。これは、糸が皮膚の下に入っているために起こる反応で、時間の経過とともに自然と馴染んでいきます。

顔の表情筋をよく使う際や、顔を洗うときなどに違和感を感じやすくなります。糸が皮膚や筋肉に馴染んでいないために起こる一時的なもので、時間の経過とともに改善していくことがほとんどです。痛みが強い場合や長期間にわたって違和感が続く場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。

ダウンタイム中の注意点

糸リフトのダウンタイムは個人差がありますが、通常2〜1か月程度です。当院の糸リフト(ショートスレッドリフト)については、ダウンタイムはほぼありません。肌荒れなどの肌コンディションで多少変わる場合があります。メイクは施術翌日から可能です。施術部位以外に関しては、当日からメイクも含めて可能です。

も腫れや内出血があった場合、激しい運動やサウナは避けましょう。飲酒や長時間の入浴なども避け、患部を強くこすったり、マッサージしたりしないようにしましょう。口を大きく開ける動作や表情筋を過度に動かすことも控えてください。

これらの行動は腫れや内出血を悪化させたり、糸の位置がずれたりする原因になります。

糸リフトの効果を長持ちさせる方法

糸リフトの効果を長持ちさせるためには、以下のような施術後のアフターケアが重要です。

  • 毎日の保湿ケアで肌に潤いを与え、紫外線対策をしっかり行う
  • バランスの取れた食事や十分な睡眠など、健康的な生活習慣を送る
  • 定期的にクリニックを受診し、医師の指示に従ってメンテナンスを受ける

効果の持続期間は個人差がありますが、適切なケアを行うことでより長く効果を実感できます。非吸収性の糸を用いた場合、効果は比較的長持ちしますが、糸の合併症のリスクも高まります。

生体吸収性糸と比較して、知覚異常のリスクは約3.7倍、糸の突出は約4.8倍高くなるという報告があります。糸の種類を選ぶ際には効果の持続期間だけでなく、リスクや副作用についても考慮する必要があります。医師とよく相談し自分に合った糸を選びましょう。

当院のショートスレッドリフトは痛みもほぼ感じません。アイグラッド式のショートスレッドリフトの詳細は、以下の記事で紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。
>>アイグラッド式ショートスレッドリフト

まとめ

ほうれい線は加齢による肌のたるみや表情筋の衰えによって現れます。糸リフトは、医療用の糸を皮下に挿入して皮膚を引っ張り上げることで、ほうれい線を改善する効果が期待できます。 

施術は局所麻酔で行われるので痛みはほぼありません。当院が採用するショートスレッドリフトのダウンタイムはほぼありません。通常、クリニックで使用している糸リフトは2~1か月程度のダウンタイムがあります。腫れや内出血などのリスクもありますが、適切なケアを行うことで効果を長持ちさせられます。 医師とよく相談し自分に合った治療法を選びましょう。

当院で採用しているショートスレッドリフトと糸リフトの違いをより詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
>>ショートスレッドリフトと糸リフトの違いを徹底解説!選ぶ前に知っておきたいポイント

参考文献

  1. 顔および頸部の糸リフト手術に関する基本的な概念
  2. 顔面糸リフト後の合併症発生率に関するメタ分析とシステマティックレビュー